未来を照らす新技術!ペロブスカイト太陽電池を徹底解説

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未来を照らす新技術!ペロブスカイト太陽電池を徹底解説

脱炭素ブログ

2025/09/25 未来を照らす新技術!ペロブスカイト太陽電池を徹底解説

「軽くて、曲がる太陽電池」として、エネルギー業界に革命を起こそうとしているペロブスカイト太陽電池。この日本発の技術は、単なる次世代エネルギー源に留まらず、日本のエネルギー安全保障と産業競争力を再び世界レベルに引き上げる「ゲームチェンジャー」として、国の支援と期待が注がれています。

しかし、そのポテンシャルを真に理解するためには、定性的な特徴だけでなく、「変換効率」、「製造コスト」、「市場規模」、「耐久性」といった定量的なデータに基づいた客観的な分析が不可欠です。

この記事では、最新の研究データや市場予測レポートを基に、ペロブスカイト太陽電池のポテンシャルを解説します。

 

1.ペロブスカイト太陽電池の誕生と進化の歴史

 

発明から現在まで:変換効率の驚異的な進化

ペロブスカイト太陽電池は、2009年に桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授の研究室から始まりました。

この年、世界で初めてペロブスカイト結晶を発電層に用いた太陽電池が発表されましたが、その時のエネルギー変換効率はわずか3.8%

これは、当時のシリコン系太陽電池が20%を超えていたことを考えると、実用化には程遠い数字でした。

 

ペロブスカイト太陽電池の変換効率の推移

2009: 3.8%(宮坂教授らが発表)

2012: 10%の壁を突破

2014: 15%を突破。シリコン系に迫る勢いを見せる

2016: 20%の大台を突破

2023: ラボレベルのセル(1cm²未満)で26.1%を記録

2024: シリコンと組み合わせたタンデム型では33.9%を記録

 

 

2.発電の仕組みと技術的優位性

 

なぜ弱い光でも発電できるのか?

太陽電池の性能は、どれだけ広い波長の光を吸収できるかにかかっています。ペロブスカイト結晶は、光を吸収して電気に変換する能力(光吸収係数)が非常に高く、シリコンの約100倍とも言われます。

これにより、非常に薄い膜でも効率的に光を吸収できるため、材料の使用量を大幅に削減できます。さらに、シリコンが苦手とする曇天時の散乱光や、蛍光灯などの室内光(約5001,000ルクス)でも比較的高い効率で発電できるという大きなメリットがあります。

この特性により、工場の屋根やビルの壁面だけでなく、これまで太陽光発電が考えられなかった屋内でのIoTセンサーの電源など、全く新しい市場を切り拓く可能性を秘めています。

 

「塗って作れる」製造プロセスの革新性

従来のシリコン系太陽電池は、高温・真空という特殊な環境で、多くのエネルギーを消費しながら製造する必要がありました。

一方、ペロブスカイト太陽電池は、原料を溶媒に溶かしてインク状にし、それをフィルム基板に印刷するように塗布(ウェットプロセス)して製造できます。

これは、新聞を印刷するようなロールtoロール方式での連続生産を可能にし、理論的には製造コストと製造時のエネルギー消費量を下げることができます。

 

3.国内外の主要メーカーと開発競争の最前線

 

【国内勢】日本発技術を社会実装へ

積水化学工業

業界トップランナーとして、独自の「封止技術」により、課題であった耐久性を大幅に向上させ、屋外暴露試験で10年相当の耐久性を実証しました。

1m×長さ3mのフィルム型セルで変換効率15.0%を達成しており、2025年の事業化を目指しています。まずは既存建築物への設置をターゲットとし、市場をリードする構えです。

 

東芝

703cm²という実用サイズのモジュールで、世界最高レベルの変換効率16.6%を達成しています。独自の「ワンステップ成膜法」により、大きな面積でもムラなく高品質なペロブスカイト層を形成する技術を確立し、量産化に向けた道を切り拓いています。

 

パナソニック

ガラス建材との融合に注力しています。ガラスに直接ペロブスカイトを成膜する技術を開発し、変換効率17.9%を達成。デザイン性を損なわずに、窓や外壁そのものを発電設備に変える「建材一体型太陽電池(BIPV)」市場での展開を目指しています。

 

4.シリコン系 vs ペロブスカイト

 

ペロブスカイトの革新性を理解するために、既存のシリコン系太陽電池と具体的な数値で比較してみましょう。

 

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LCOE(均等化発電原価)

LCOEは、発電設備の生涯コスト(建設、運転維持、廃棄など)を、生涯発電量で割ったもので、1kWhあたりの発電コストを示します。この数値が低いほどコスト競争力が高いことを意味します。

 

5.市場予測と経済インパクト

 

世界市場は2035年に1兆円規模へ

ペロブスカイト太陽電池の世界市場は2035年には1兆円に達すると予測されています。その後も成長は続き、2040年には3兆円を超えるとの試算もあります。年平均成長率(CAGR)は数十パーセントに達し、成長が期待される分野です。

 

国内市場の導入目標と経済効果

経済産業省は「グリーン成長戦略」の中で、次世代太陽電池の導入目標として2040年までに約20GWを掲げています。これは、日本の総発電設備容量の約10%に相当する野心的な目標です。この市場創出は、数兆円規模の経済効果と数万人の雇用を生み出すと期待されており、素材、製造装置、建設、メンテナンスといった幅広い裾野を持つ巨大なサプライチェーンを国内に構築することを目指しています。

 

6.実用化への3つの壁と克服への挑戦

輝かしい未来が期待される一方で、本格的な社会実装までには、3つの大きな技術的課題が存在します。

 

課題1:耐久性

ペロブスカイト結晶は水分や酸素、紫外線に弱いという根本的な課題があります。目標とされる「屋外環境で20年間、発電効率を80%以上に維持する」というシリコン系並みの耐久性を実現するため、積水化学が実証したような高度な封止技術や、結晶そのものの安定性を高める材料開発(添加剤の工夫など)が、今まさに産学官連携で進められています。

 

課題2:大面積化と効率維持

ラボレベルの小さなセルで高い変換効率が出ても、それを面積の大きなモジュールで再現することは容易ではありません。「塗る」プロセスは、大面積で均一な膜厚と結晶品質を保つのが難しく、面積が大きくなるほど効率が低下する「サイズアップの壁」が存在します。東芝などが開発する高度な成膜技術が、この壁を打ち破る鍵となります。

 

課題3:環境負荷(鉛問題)

現在、高い変換効率を示すペロブスカイト材料には、微量の有害物質である鉛が含まれています。含有量は極めて微量ですが、将来的な大量生産と大量廃棄を見据えると、環境への影響は無視できません。EURoHS指令(特定有害物質使用制限指令)のような環境規制に対応するため、鉛をスズなどに置き換えた「鉛フリー」ペロブスカイトの研究や、破損時の鉛溶出を防ぐ技術、リサイクル技術の確立が急務となっています。

 

 

今回は、ペロブスカイト太陽電池のポテンシャルを、変換効率の推移、コスト目標、市場規模予測といった具体的な数字を軸に多角的に分析してきました。

その進化のスピード、コスト競争力、そして未開拓の市場を創出する力は、単なる「シリコンの代替品」という枠を遥かに超えています。それは、日本のエネルギー自給率を向上させ、国際社会での産業競争力を取り戻し、さらには私たちの生活様式そのものを変革するほどのインパクトを秘めています。

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